はじめに
「猫のコロナウイルス」という言葉を
皆さんは聞いたことがありますか?
日本でも多くの猫が保有していると言われており、
多くの場合、病的な症状を起こすことのないウイルスです。
しかし稀に下痢などの消化器症状を起こすことがある他、
感染した猫の一部が「猫伝染性腹膜炎(FIP)」という
致死率の高い病気を発症することがあります。
本記事では、山梨県の「昭和動物病院」近野みまこ院長より、
皆さんにぜひ知ってほしい、猫伝染性腹膜炎(FIP)についてご紹介します。
🔽今回の先生です
はじめまして。
昭和動物病院の院長 近野 みまこと申します。
どうぞよろしくお願いいたします。
猫伝染性腹膜炎(FIP)
猫コロナウイルス感染症の症状は軽微な腸炎、
もしくは無症状のため、それほど恐ろしい感染症ではありません。
しかし、猫コロナウイルス(FCoV:Feline coronavirus)
に感染している一部の猫の体内で、
猫伝染性腹膜炎ウイルス(FIPV:feline infectious peritonitis virus)
が全身感染を起こすといわれています。
この病気は確定診断が難しく、治療法も確立されていません。
病気が進行すると、猫の命にかかわる危険性が高まります。
FIPは若い猫に多く発症し、一度発症すると治療が難しく
治癒率が低いとされています。
FIPの最新治療法
これまでFIPは有効な治療方法がなく、不治の病とされてきましたが、
抗ウイルス薬の登場により治療可能な疾患となりました。
・GS−441524(錠剤)
・レムデシビル(注射薬)
2023年には、滲出型あるいは非滲出型FIPの猫をこの
レムデシビルとGS−441524の組み合わせで治療した結果、
81.3%の猫が3ヶ月間の治療期間治の終了時点で寛解状態にあり、
生存していた(治療の効果が認められた)と報告されています。
昭和動物病院でも使用を始めています
かつてGS−441524は、模倣品がブラックマーケットに流通し、
高額で取引されていましたが、201年にイギリスで
正規の動物用医薬品として認可・販売され、
国際猫医学会(ISFM)から治療ガイドラインも出ています。
日本ではまたFIP治療薬は認可・販売されていませんが、
当院ではイギリスから輸入して治療に使用しています。
実際の治療について
レムデシビル(注射薬)
・レムデシビルは猫の体内で代謝されるとGS-441524になり、薬効を発揮する
・1日1回、静脈注射あるいは皮下注射で投与する
(静脈注射の場合は生理食塩水で希釈し、シリンジポンプで30分かけて投与)
・皮下注射では、50%の猫で注射部位に疼痛が生じる(皮下注射は希釈不要)
・治療開始から 48 時間以内に胸水が貯留、あるいは胸水貯留が悪化することがある
・静脈注射後、数時間は元気がなくなったり、吐き気が現れたりすることがある
・ALT 上昇、軽度の好酸球増多が認められることがある
GS-441524(錠剤)
・1日2回経口投与を行う(投与量は表1を参照)
・投薬は空腹時(食餌の1時間以上前)に行い、投与後は少量の水を飲ませる
・食餌は投与1時間後から可能
治療期間
重度の臨床徴候がありGS-441524(錠剤)の
経口投与ができない状態の間は、レムデシビル(注射菜)を
数日〜2週間を目安に使用し、経口投与が可能になったら
GS-441524に切り替えて合計84日間(3ヶ月間)投与を行います。
即効性が高く、副作用も少ない、再発症例も少ないと言われており、
その改善率の高さからFIPにおいて信頼できる治療法です。
まとめ
この記事では、猫の猫伝染性腹膜炎ウイルス(FIP)
についての最新治療法についてご紹介しました。
猫FIPは以前は治療が困難であった病気でしたが、
最近では新しい治療薬が登場し、命を救う可能性が高まっています。
より詳細な情報や最新の治療法について知りたい方は、
ぜひ昭和動物病院までご相談ください。
愛する猫ちゃんの健康を守るために、
猫伝染性腹膜炎ウイルス(FIP)についての
正しい知識を身につけていきましょう。
施設情報
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〒409-3866 山梨県中巨摩郡昭和町西条1120-8
TEL:055 – 275 – 1288
診療受付時間:平日9:30〜12:00、15:00〜18:30
土曜9:30〜16:00(お昼休診時間なし)
休診日:日曜日、祝日、木曜日
※トリミングやお薬だしは通常診察時間でも対応できます。
診療対象動物:犬、猫、モルモット、ハムスター、ウサギ
予約のとり方: お電話、WEBサイトで予約が可能。
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