はじめに

愛犬同伴旅行は当たり前の旅行スタイルになりました。
今はどこのリゾートや観光地にも「ペット可」の宿や施設があります。旅行業界では、以前は「ペットツーリズムはニッチなマーケット」との認識でしたが、最近では国内マーケットにおける旅行カテゴリーとして強く期待されています。
現在、大手旅行サイトで「ペット同伴」で検索すると全国で約4200軒の宿がヒットします。サイト掲載宿全体の10%を超える数で、もうニッチな旅行スタイルではないことがわかります。
また、ホテル業界最大の総合展示会「国際ホテル・レストランショー」において、2025年から「ペットツーリズムゾーン」が新設されたことからも、ペット同伴旅行に対しホテル旅行業界がしっかりと認知してきた現れではないでしょうか。(2月17日から開催の国際ホテル・レストランショー2026では、私も3日間ペットツーリズムセミナーで登壇させていただきます。 参考:参考リンクはこちら)
ペット同伴施設は今後ますます増えると予想されます。これまでは「一緒に入れてあげる」だけで喜んでいただいていると考えられていましたが、今やその施設が顧客満足度(CS)を高めお客様にご満足いただけるサービスを提供できないと選んでいただくことが難しい時代となりました。つまり、「温泉」「グルメ」「観光」など既存の旅行カテゴリー同様「ペットツーリズム」も様々なノウハウがないと生き残れないと考えなくてはなりません。また施設そのものの魅力もありますが、そのエリアにおいて「何が楽しめるのか?」といった地域ぐるみでのサービスの多様性と情報発信が求められてきています。
私は、長年リゾートレジャー事業における開発・M&A・事業再生などに携わってきた経験と、10年間にわたり自らペット同伴ホテルや旅館、カフェ、ドッグshopなどを経営した経験を基に、「これからペット同伴を検討している」「ペット同伴を始めたが手ごたえがない」「ペットツーリズムで地域の観光を活性化したい」と考えている皆様に向けて、本サイトで役立つアドバイスをお伝えしてきました。
今回は第3章として、「ペットツーリズムによる地域観光活性化策~「ワンコネット那須」成功への軌跡」をご紹介します。
「ワンコネット那須」の歩み


犬を連れて那須に来たことのある人は良くご存じの、『ワンちゃんとお出かけマップ』は、今から22年前、那須の犬連れ宿数軒が集まって作り始めたものです。那須に来てくれる犬連れのお客様に那須をよく知ってもらいたいという思いや、犬連れで那須を楽しんでもらいたい、食べたり遊んだりするときも犬連れで困ることが無いように、そして、同時に犬同伴OKのお店とお客様をつなげて地域振興のお手伝いをしたい、という思いから、全くのボランティアで始めたものです。
2022年時点では、お出かけマップ発行部数10万部(那須エリアでの設置配布70%、首都圏での設置及びイベントでの配布30%)、ホームページ年間PV数10万件となり、「日本一ドッグフレンドリーなリゾート」を掲げても恥ずかしくないだけの実績に成長しました。


民間主導で運営
おでかけマップ発行10年を境に協議会を設立し、私が会長に就任。それを機にマップやホームページを全面リニューアルしました。その後イベントの主催、ペットイベントへの出展、首都圏マーケットへの積極営業などを行うようになります。地元行政の直接的支援はほとんど受けず、2019年より3年間は那須町より「推進業務委託費」として10万円をいただいていましたが、マップの制作費用はもとよりすべての活動費用は協議会の広告収入によって賄われてきました。ちなみに2021年版の広告収入は約260万円を計上しています。
参考① : お出かけマップやホームページの掲載募集要項(2021年版)

参考② : 主なMAP設置場所(2019年実績)

参考③ : ドッグ関連イベントでの配布・パブリシティ・その他PR活動(2019年実績)

おでかけマップの発行当初を振り返ると、当時は日本のどこもこのような犬連れ専用の地図を作っておらず、手探りの状態からのスタートでした。7軒の犬連れ宿(ワンコネット那須)の仲間たちが、全くのボランティアで手分けをし、犬同伴OKのお店をはじめそうでないお店にも同伴をさせていただけるように1軒1軒頭を下げ、地図に載ってくれるように頼んできた活動は、今では懐かしい思い出でもあり誇りでもあります。
官主導・官民一体で地域活性化活動をすることへの不安

最近、ペット同伴客の誘致に力を入れる観光地が増えてきました。民間主導で那須のような活動をしている地域もあれば、自治体や観光協会主導で行っている地域、また、官民協力しているものもあります。昨今のインバンド特需をあまり受けない地域では、喫緊の課題として大きな予算を付け、コンサルを交えてペットツーリズムの推進を図っているようです。
これら地域から私に対する質問で必ずあるのは、
「何故、那須は民間の力だけでここまで地域の観光活性化のための活動ができたのか?」
「土日はかき入れ時でイベント運営に参加できないがどうやっているのか?」
というものです。
その際私は「(地域の為ではなく)自分の事業の利益の為ですから」と回答しています。私だけでなく当時の協議会のメンバーとはその意思の根っこ部分をしっかり共調したうえで協議会を作りましたので、メンバー全員がそれぞれの立場と都合の中で矛盾なく協議会活動に打ち込むことができました。
行政や観光協会が中心で活動されることはとてもありがたいことです。しかしながら「地域の観光客が増える」ことと「各施設の利益が上がる」ことがイコールで考えられるか?ということに不安を感じます。民間事業者が「自分の施設の利益アップは結果、地域経済への貢献につながるはず」と考えることのほうがより地域観光の活性化が促進されると私は考えています。
公の予算を軸に活動する場合は、さらに不安が募ります。活動は行政の職員が中心でやる事になるので、顧客との接点が少ないことによるニーズへのズレが生じかねないこと。また民間事業者は、意見は言うが時間と金を提供しないので貪欲な達成意識を持てるのか?地域貢献活動=自分の利益というポジションに置くこと、「自分ごと」でやることがとても大切なモチベーションだと私は考えています。
地域を売る
ワンコネット那須の活動目的は、以下としています。
①那須高原を「日本一ドッグフレンドリーなリゾート」として国内外に広く認知されるべくPRすること。
②那須地域におけるペットツーリズム事業の発展と地域の活性化に寄与すること。
③愛犬家とその愛犬たちから信頼されるサービスの提供を発展的に提供し、持続していくこと。
「日本一ドッグフレンドリーなリゾート那須」とのマーケット評価を得るべく、さらなるPRを行っていく。それに加え、ワンコネット那須の持つネットワーク力と情報を愛犬家に広くPRすることができれば、地域活性化と各施設の収益UPに貢献できると考えています。
よって、愛犬家に少しでも喜んでいただけるように各宿泊施設や飲食店、レジャー施設、交通機関は親密に協力することがとても大切になります。これは相互情報ツールの整備やSNS等を活用した連携もありますが、やはり日々のお付き合いが重要なキーになります。
私はペット同伴ホテルを経営していましたが、チャックインの際には良くお客様に「今日はどこに寄ってきたんですか?」とお聞きします。その時に得た情報はクレームも含めホテルスタッフに共有するだけでなく、内容によってはその施設へも即日報告するようにしていました。
またチェックアウトの際には「これからどこへ行かれるんですか?」とお聞きします。おススメ施設を尋ねられることも多く、ワンちゃんとお出かけマップ掲載店の今の情報を日頃からチェックしていれば「今日は〇〇牧場でイベントやってますよ」などおススメできます。また「△そば店に行きたいんだけどいつも混んでるんですよね」などのご相談があれば、そのそば店オーナーに電話し「□□様3名様とワンちゃんが11時に伺いますのでお願いします」と頼んでおく(もちろん、たまにプライベートで食べに行ったり地域の会合でお話ししたりしていて信頼関係を築いています)ことで後日そのお客様から「ホテルの紹介と言ったらこんなサービスしてもらえました」なんてお礼メールをいただくこともたびたびありました。一組のお客様を複数の施設で連携しサービスを提供することで、その地域のファンとなりリピーターが増えることになります。

那須はアウトドアレジャーも盛んでしたので、各アウトドアガイドとも頻繁にコミュニケーションをとりワンちゃんが一緒でも遊べるプログラムの開発も行ってきました。今は各地で体験できますが「カヌーツアー」「サップ」「スノーシューツアー」などで愛犬同伴プログラムを開発したのは那須が先駆けであったように思います。アウトドアガイドとペット同伴宿泊施設のオーナーが一緒になって安全で楽しいアウトドアレジャーを作り上げ、それを各宿泊施設が顧客へPRすることで、旅行の新たな魅力が生まれました。
最後に

計3回にわたりペットツーリズムビジネスに関するコラムをご紹介してきました。
ペット同伴施設をすでに経営されている方、またペット同伴施設の運営を検討されている方、地域観光活性化のためにペットツーリズムに関心がある方、ペット業界ではないがペットマーケットへの進出を検討されているメーカー様など、是非何かご相談があれば是非お気軽にご連絡下さい。特にリゾート観光地の宿泊施設様の場合でも、直接現地へ行きお話を伺い課題の整理を一緒にさせていただきます(初回相談料は交通費も含めいただいておりません)。
また、2026年2月17日~20日に東京ビッグサイトで開催される「国際ホテル・レストランショー(https://hcj.jma.or.jp/)のペットツーリズムゾーンにおいて、弊社㈱arigatoも出店しております(西棟アナトリウム)ので、是非お越しいただければ詳しくお話もできると思います。
1~2章のまとめ
●第1章はこちら
【第1章】専門家が語る|ペット同伴ホテルの経営、その極意と成功のポイントを紹介!!その1
●第2章はこちら
【第2章】専門家が語る|ペット同伴ホテルの経営、その極意と成功のポイントを紹介!!その2
執筆者のご紹介
森村晃一

㈱arigato代表取締役
ペットツーリズム事業コンサルタント
森村晃一
30年強にわたってリゾートレジャー事業の開発・M&A・経営再建に携わり、特にペット同伴へのコンバージョンによりいくつもの宿泊施設の再建やリゾート地の観光振興に携わった経験を基に、業界各専門家とのネットワークも活用して、ペット同伴宿泊施設の経営や集客営業、サービスのサポート、関係商品の開発・営業支援をいたします。 詳しくはホームページをご覧ください。お問い合わせは、Emailで info@arigato-dog.com まで。
<アドバイザー先企業・団体> 敬称略 2026年1月現在
〇アニコム損害保険株式会社
〇株式会社スミノエインテリアプロダクツ
〇ナガノインテリア工業株式会社
〇日本抗菌センター(株式会社B-CRUIS)
<パートナー企業・団体> 敬称略 2026年1月現在
〇一般社団法人Japanペットケア―マネージャー協会
〇一般社団法人日本ドッグサップ協会
〇C-mo pro Travel (株式会社CS-C)
〇ワンちゃんとおでかけ情報メディア「ハピプレ」(メディスペット株式会社)
執筆:2026年1月



