はじめに
猫の不妊手術は、猫が健康で幸せな生活を送るための重要な選択肢の一つです。
不妊手術には妊娠を防ぐ目的だけでなく、病気の予防や行動問題の軽減など、さまざまな効果があります。
本記事では、不妊手術の目的や時期、麻酔リスクについて詳しく解説し、手術を検討する際に知っておきたいポイントをお伝えします。
🔽今回の先生です
パル動物病院の小野 啓と申します。
少しでも皆様のお役に立てるようお話しさせていただきます。
どうぞよろしくお願いいたします。
猫の性成熟と性周期
猫は生後6か月頃から性成熟し、妊娠可能になると発情期が見られるようになります。1回の発情期間は2週間程といわれ、1~ 2か月の間をあけて不規則に繰り返します。
さらに、猫は交尾刺激によって排卵が起こるため、犬や人のようにタイミングが合った時のみ妊娠する動物と異なり、妊娠率が高く繁殖に長けている動物です。
不妊手術の目的
一番の目的は妊娠させないことです。他にも、不妊手術は、加齢に伴って発病しやすいと言われる乳腺腫瘍や、子宮蓄膿症(子宮内に膿が溜まってしまう病気)の発生リスクを低下させると言われています。
- 乳腺腫瘍:乳腺腫瘍は良性と悪性に分けられますが、悪性の場合は肺などに転移し重症化します。
- 子宮蓄膿症:早急に治療を開始し、蓄膿した子宮を摘出しないと、敗血症(菌が全身を巡り様々な臓器障害を引き起こす病気)となり、命に関わる病気です。
この2つの疾患はどちらも重症疾患であり、不妊手術の実施は予防としての効果が期待できます。
手術時期
不妊手術は、猫の成長に応じて実施されます。ワクチン接種後、体格が十分(2.4kg 程)に成長した生後6か月頃からを目安に実施可能となります。
しかし、子猫の頃にはヘルペスウイルス感染症(鼻水や目脂などの風邪症状をはじめとする疾患)や下痢などで体調を崩してしまう子も少なくありません。健康状態が良好な時期に行うのが望ましいです。体調や体格をみながら、実施時期を検討しましょう。
また、発情時期は子宮への血流量が増え、手術による出血リスクが高まるため避けるべきです。
先に述べた乳腺腫瘍の発生率は、手術実施時期が生後6か月以前では91%、7~12か月では86%、13~24か月では11%低下するとされる報告があり、早期手術が望ましいとされています。
しかしそれ以降の年齢でも、未避妊の場合は避妊猫に比べて乳腺腫瘍の発生率は約7倍とされており、成猫でも不妊手術の実施は十分検討する価値があります。
過剰な早期手術や体調が優れない場合はリスクが高まるため、信頼できる獣医師と相談することが重要です。
麻酔リスク・術後について
手術は全身麻酔下で実施されます。2017年における記録によると、猫の不妊手術における麻酔死亡リスクは、猫38026頭のうち24頭(0.063%)とされており、かなり低確率ですが、ゼロではありません。心配なことや疑問な点などは、あらかじめ獣医師とよく相談しておきましょう。
術後1~2週間程度で傷口が完全に治癒し、猫は通常の生活に戻ることができます。
ただし、ホルモンバランスのの影響により太りやすくなるため、体重管理に気をつけるようにしましょう。
まとめ
猫の不妊手術は、繁殖制限だけでなく、健康上のリスクを減らし、行動問題を軽減する大切な選択です。適切な時期に手術を行うことで、乳腺腫瘍や子宮蓄膿症といった命に関わる病気を予防し、猫が長く健康で快適な生活を送ることができます。
愛猫の健康を守るために、不妊手術の必要性について信頼できる獣医師としっかり話し合い、最善の選択をしてください。
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