はじめに
今回のテーマ『しつけは信頼のかたち』


犬と人とのコミュニケーションコーチ
JAHA認定:家庭犬しつけインストラクターの、井野めぐみです。
ー 2000年より6年間茨城県の動物病院で動物看護士として勤務。
ー 2007年家庭犬しつけ方教室DOGGY FRIENDSを発足
しつけとは、そもそも何でしょう?
言葉を話せない動物との信頼関係は、とても繊細で、だからこそ難しいものです。
ワンちゃんや飼い主さんによって、しつけの方法はさまざま。
でも大切なのは、「叱らずに信頼関係を築く」という考え方です。
今回は、この「叱らないしつけ」に注目し、愛犬との絆を深めながら、
日々の暮らしで実践できる方法を詳しくご紹介します。
第6回:叱らないしつけの基本
①あなたへの問いかけ:本当に犬は理解できているのでしょうか?

犬を叱ったことはありますか?
でも、その叱り方で、犬は本当に理解できたでしょうか。
「ダメ!」と繰り返しても直らない行動、思い当たることはありませんか?
もしかすると、それは犬のせいではなく、
伝え方や関わり方の工夫が足りなかっただけかもしれません。
② ポイントと事実:しつけとは何か?

しつけとは何か?
「おすわり」や「まて」を教えるだけがしつけではありません。
しつけとは、犬が人と一緒に安全で快適に暮らす力を育てるコミュニケーションです。
ルールを教えることは、愛犬を守ることにつながるため、愛情表現のひとつとも言えます。
しつけのベースは信頼関係です。
叱らずに伝える方法は、犬の心を守りながらわかりやすく行動を導き、
自然に信頼関係を深めることができるのです。
しつけが必要な理由
- 犬自身が安心して生活できるようになる
- 飼い主と犬の関係がスムーズになる
- 社会の中で迷惑をかけずに暮らせる
- 危険から犬を守ることができる
叱らない方法とは?
叱る方法はやめさせたい行動に注目しますが、
叱らない方法は”してほしい行動”に注目します。
そして”してほしい行動”を犬がしたときに「いいこ」と褒めたりご褒美をあげたりして、
その行動をとると得と思わせます。
例)散歩の引っ張り問題
横で歩いているときにおやつをあげる→「横について歩くと良いことがある」と学習します。
叱るしつけのデメリット
- 犬は“何がダメだったのか”を理解できない
- 飼い主に対して不信感を抱くことがある
- 恐怖で行動を止めても、根本的な理解にはつながらない
③ 解釈と視点

「叱らないしつけ」と聞くと、“甘やかす”と感じる方もいるかもしれません。
しかし実際は、犬に分かりやすく「望ましい行動」を教えていくことが本質的なしつけです。
重要なのは「ダメ!」ではなく、「そうそう、そうしてほしい!」という伝え方。
これは、人とのコミュニケーションでも同じですよね。
また、犬は人間のように「理由」や「意図」を理解できません。
だからこそ、正しい行動を“成功体験”として積み重ねることが、
犬にとってもっとも理解しやすい方法なのです。
④ 実生活でのヒント
● 叱るより先に、環境を整える
例:ゴミ箱をイタズラする犬には「ダメ!」と叱るのではなく、蓋付きのゴミ箱に変える。
犬が望ましい行動をしたその瞬間に、犬がとても嬉しくなる方法で褒めましょう。
1回5分でもOK。日常の中で繰り返すことで、犬は自然と覚えていきます。
犬の反応をよく観察し、「どんな伝え方なら伝わるのか」を試行錯誤する姿勢が、
関係を深めるカギです。
⑤ まとめ

犬へのしつけは、“幸せに生きるために必要なコミュニケーション”です。
その根っこにあるのは、「信頼関係」と「安心感」。
困る行動に注目するのではなく、してほしい行動を具体的にイメージして引き出し、「できたね!」「うまくいったね!」という成功体験を積み重ねることが、犬のやる気を育てます。
言い換えれば、しつけとは、犬との信頼を目に見えるかたちにするプロセスなのです。
🐾次回予告
テーマは「問題行動には理由がある」不安や環境を見直してみようです
どうぞお楽しみに!
執筆者「インストラクター」紹介
井野めぐみ

犬と人とのコミュニケーションコーチ
JAHA認定・家庭犬しつけインストラクター。
動物病院勤務を経て、2007年に
家庭犬しつけ方教室「DOGGY FRIENDS」を開設。
叱らずに伝わる、科学的かつ優しいトレーニングを通じて、
犬と人の“心が通じ合う暮らし”をサポートしています。
現在、都内:木場公園で開催されるKIBAワンニャンHAPPYフェスのしつけトレーナーとして多くのペットオーナーへ教室を開催している。
ねえねえ、何を言いたいの?行動学で読み解く、犬があなたに伝えたいこと
井野めぐみ (著)
本書では、行動学・行動分析学の知恵をベースに、
犬の行動に隠れた“本当の気持ち”をやさしく解説していきます。
「どうしてこうするの?」が「そうだったのか!」に変わる瞬間、あなたと愛犬の関係はぐっと安心に、
そして深い信頼へと変わっていきます。